私は昔から「嘘つきだ」と言われることが多く、ずっとその理由がわからずに悩んでいました。
自分では決して嘘をついているつもりはなく、なぜそんな風に見られてしまうのか、理解できなかったのです。
しかし、大人になってADHDと診断されたことで、自分の特性を少しずつ理解できるようになってきました。
その中で気づいたのが、「感情や衝動のコントロールが苦手」という特性です。
強い感情に任せて、ついその場の勢いで「できる」と言ってしまったり、
本当は難しいことでも「やる」と言ってしまったりすることがありました。
結果的に、それが「嘘」と受け取られてしまうのです。
これは決して悪意のある嘘ではなく、自分自身の衝動性や思い込みによるものでした。
きっと、同じような経験をして悩んでいる方もおられるのではないでしょうか。
今回は、そんな私の体験を通じて感じたことを共有したいと思います。
ADHDは衝動的に発言をしてしまうことが嘘だと取られてしまう
ADHDの特性として、衝動的に考えずに言葉を話してしまうということがあります。
私自身も質問をされたことに対して、衝動的に考えずに回答して、その内容が全く違うということは往々にしてあります。
例えば、今日の阪神のスタメンは誰か?と聞かれたときに、今日の内容をチェックせずに「たぶんいつものメンバーだと思う」といったようなことがよくあります。
冷静に考えれば、「わからない」と正直に答えれば済む話なのですが、
その場になると、知らないことを知らないと言うのが怖かったり、
自分を少しでも良く見せたかったり、「物知りな人」と思われたいという気持ちが勝ってしまうのです。
これは自分を守ろうとする反応であり、自己肯定感の低さと深く関係しているように感じています。
自己評価が低いからこそ、少しでも「できる自分」「知っている自分」でいたいという願望が、衝動的な発言に表れてしまうのです。
こうした言動は、ADHDと診断される前は、特に気にしたことはありませんでした。
自分でも「なんでこんなことを言ってしまったんだろう?」と思いながらも、その原因について深く考えたことはなかったのです。
けれど、精神科を受診してADHDという診断を受けてから、自分の言動を冷静に振り返る機会が増えました。
すると、自分がいかに衝動的に発言していたかが、少しずつ見えてきたのです。
特に、自分のミスややり忘れを指摘されたときに、その傾向が強く出ると感じています。
本当はやっていなかったことでも、「やったはず」「今ちょうどやろうとしてた」などと口走ってしまうことが多々ありました。
それは意図的な嘘ではなく、頭の中で瞬時に「自分を正当化したい」という気持ちが働き、
無意識のうちに言い訳めいた言葉が口から出てしまうのです。
失敗や叱責の経験が積み重なると、「また怒られる」「また呆れられる」といった恐怖が先に立ち、
自分を守るために衝動的に発言してしまうのです。
その結果、周囲からは「嘘をついている」と受け取られ、信頼を失ってしまうことがあります。
この悪循環が、さらに自己評価の低下につながり、ますます「嘘」をついてしまうという連鎖に陥るのです。
もちろん、これは意図的に他人をだまそうとしているわけではありません。
自分を守るため、あるいは自分を保つための無意識的な反応です。
しかし、周囲の人にはそうは伝わりにくく、「嘘つき」「信用できない」と思われるのは、とてもつらいことです。
だからこそ、自分の特性を正しく理解し、少しでも衝動的な発言を減らす努力をしたいと思うようになりました。
嘘をつく人が嘘をつかないようにはどうすればいいのか?
私は精神科に通い、ある程度自分の特色を理解することができるようになってから、
自分が嘘をつきそうになった時に、ある程度抑制できるようになったかなとは感じています。
特に、会話の中では即答せず、「ちょっと確認してみます」とワンクッション置いたり、
「今はわからない」と正直に言ったりすることを、意識するようにしています。
すぐにすべてを変えることは難しいかもしれませんが、
自分自身を責めすぎず、少しずつ改善していくことが大切だと感じています。
結論としてADHDの人が嘘をついてしまう背景には、自己肯定感の低さが大きく関わっていると感じています。
失敗や忘れ物が多く、周囲から叱られる経験が積み重なることで、自分に対する評価が下がり、「できる自分」を演じたくなるのです。
そのため、本当は知らないことでも知っているように答えたり、やっていないことを「やった」と言ってしまったりしてしまうのです。
これは自分を守ろうとする無意識の防衛反応であり、嘘をついているというよりも「そう言わざるを得なかった心の背景」があるのではないでしょうか?
ADHDの方は、社会人人生において様々な失敗をしていることが多いはず。
私自身が特にそうでしたのでその感覚はわかります。何なら今もそれは変わっていません。
そのため自己評価が著しく低い方が多いはずです。
だからこそ自己肯定感を高めるために、自分をよく見せようとしてしまうのが原因になっているのです。
しかし、衝動的に話をしてしまう、自分をよく見せてしまうという特性を理解した上で、
正直に話をすることで、自分自身に嘘をつかないという成功体験を積み重ねることが一番重要です。
自分に嘘をつかず正直に答えた、ということでもちろん怒られることはあると思います。
ですが、自分を取り繕って嘘をついたことに対して怒られる方がはるかに問題が深刻になるのです。
同じような経験で悩んでいる方がいれば、ぜひ自分の特性と向き合ってみてください。
「嘘をついてしまう」背景には、自分を守ろうとする心の働きや、傷ついた自己評価があるかもしれません。
そして、それは誰にでも起こり得ることであり、決して「性格の問題」だけではないということを知ってほしいです。
そして最近特によく感じることがあります。
正直に「知らない」、「わからない」と答えることができれば、どれだけ心が楽かをぜひ感じてほしい。
昔はこうしたことで自分がハブられるのではないかと思うこともありましたが、
そうではないのです。
だからまずは自分に正直に、自分に嘘をつかないようにするところから始めてみてはいかがでしょうか?
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。