社会人として生活する中で、約束や予定を守ることはとても大切なことです。
誰かとの打ち合わせ、職場での締め切り、プライベートの予定など、
毎日の生活は小さな約束の積み重ねで成り立っています。
しかしADHDの特性を持つ私にとって、それがなかなかうまくいきません。
悪気はまったくないのに、約束していた時間をうっかり忘れてしまったり、
予定をすっぽかしてしまったりすることが何度もありました。
そのたびに申し訳ない気持ちと、自分への落胆が繰り返されます。
最初はちょっと忘れっぽいだけだと思っていましたが、次第に周囲からもちゃんとしてと注意されることが増え、
自分のだらしなさを責めるようになりました。
しかし後にADHDという診断を受けたことで、これがただの性格の問題ではなく、脳の特性に起因することだと知りました。
この特性とどう付き合い、どう対処していくのか。
今回は、私自身の体験と工夫について、3つの視点からお話ししていきたいと思います。
また忘れてると何度も言われるたびに自分が嫌になる
「また忘れてる」と言われるたびに、自分自身を責め、自分はダメな奴だと落ち込んでしまいます。
社会人になってからというもの、仕事の会議の開始時間や、書類の提出期限の約束まで、細かな予定をうっかり忘れてしまうことが何度も続いています。
それは決して怠けているわけでも、相手を軽んじているわけでもありません。
ただ、自分の頭の中から突然すっぽりと抜け落ちてしまう感覚で、
「どうしてこんな大事なことを忘れてしまったのか」と、自分でも理解できず戸惑うばかりです。
そして、そのたびに周囲の人からまた忘れてると言われると、申し訳なさと同時に、深い自己嫌悪に襲われます。
実際に迷惑をかけているのは私なのですが、何度も繰り返し指摘されることで、まるで責められているような気持ちになってしまうのです。
自分が無能で、だらしない人間のように思えてしまい、こんな自分では仕事なんてまともにできないのではないかと、落ち込むことも少なくありません。
誰かが悪いわけじゃない。
自分が悪い。
なのに自分自身が嫌になる。
一度や二度なら笑って済ませられることも、繰り返されるうちにだんだんと信頼を失っていくのを感じます。
そしてその失われていく信頼の重さに、自分でもプレッシャーを感じて、
今度こそ忘れないようにしよう、次は絶対にちゃんとやろうと強く心に誓うのですが、結局また同じことを繰り返してしまう。
精神論で何とかなるようなものではなかった。
そんな自分に対して、苛立ちと情けなさが混ざり合い、心が少しずつ疲弊していくのです。
「自分は本当に社会人に向いていないのではないか」「もう誰にも信用されないのではないか」そんな思いが今でも頭をよぎることもあります。
ミスが重なるたびに、仕事への自信がなくなり、他人との関係にも消極的になってしまう。
それが結果につながらないというもどかしさと、心の中で戦う毎日です。
脳の仕組みが、約束を「大事なこと」として記憶させづらい
実はADHDの脳には、注意や記憶、計画性に関わる脳の機能に特有の特性があると言われています。
たとえば、ワーキングメモリが弱いと、目の前のことに意識が向いているときに、先ほどまで考えていた予定や約束がすっぽり抜け落ちてしまいます。
また、ドーパミンという神経伝達物質の分泌量が少ないため、重要なことだと頭では理解していても、
注意を持続させたり、行動に移すモチベーションがなかなか湧いてきません。
その結果、やるつもりだったけど忘れてしまった、メモしたのにメモを見なかったといったことが頻発するのです。
さらに、目の前に別の刺激があると、そちらに注意が向きやすく、今すべきことが後回しになってしまう傾向もあります。
これらは決して怠けているわけではなく、脳の特性による自然な反応なのです。
自分の脳に合わせた「忘れない仕組み」をつくるようになった
このままではいけないと思い、私は努力して覚えることをやめました。
その代わりに、忘れることを前提に行動するようにしたのです。
具体的には、予定を必ずスマートフォンのカレンダーアプリに入力し、通知機能を使って前日・当日・直前の3段階でリマインドするようにしました。
また、アナログの手帳にも同じことを記入し、朝と夜に確認するルーティンを習慣にしました。
さらに、予定を口に出して確認するセルフトークや、信頼できる人と予定を共有してダブルチェックできる仕組みも導入しました。
最初は手間だと感じたものの、これらの工夫を取り入れることで忘れてしまったという失敗がかなり減り、
自分に対する信頼感も少しずつ取り戻せるようになりました。
ADHDの特性を否定せず、うまく付き合うことこそが、私にとっての一番の改善策だったのです。
どうすれば忘れないようになるかを自分流で考えてみよう
最近は、そんな自分の特性を否定するのではなく、工夫でカバーする道を選ぶようになりました。
手帳やスマホだけに頼るのではなく、周囲の協力を得ながら、どうすればうまく回るかを考えることを大切にしています。
そして何より、自分を責めすぎないようにすること。できない自分ではなく、工夫していける自分に意識を向けるようにしています。
ADHDであることで、失敗することはきっとこれからもあると思います。
でもそれは、怠けているからでも、いい加減だからでもありません。
少しだけ脳の使い方が違うだけ。
だからこそ、その違いを理解し、向き合っていく姿勢が何よりも大切だと感じています。
自分にとって最善のやり方を見つけ、歩き続ける。
その積み重ねこそが、私たちにとっての「できる」の形なのかもしれませんね。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。