精神科に通うまで、私は長い間足踏みをしていました。
自分がADHDであること、そして障害を持っていることを認めるのが怖かったからです。
認めてしまうと、自分の価値が下がるように感じていたのかもしれません。
しかし実際に受診してみて、今は本当に良かったと思っています。
診断が出たことで、自分の特性を客観的に理解できるようになり、生きづらさの原因にも少しずつ気づけるようになりました。
それは私にとって大きな一歩でした。
もちろん、診断を受けたからといってすぐに全てが変わるわけではありません。
今も変わらない部分や、苦手なことはたくさんあります。
それでも、「なぜ自分はこうなんだろう」と悩み続けていた過去の自分より、少しだけ前に進めたように感じています。
今日は、診断を受けて変わったこと、そして変わらなかったことについてお話ししたいと思います。
ADHDと診断されてから変わったこととは?
ADHDと診断されてから、大きく変わったことが二つあります。
まず一つ目は、自分自身の特性や行動の傾向に気づくことができたという点です
。私は過去に何度か交通事故を経験しています。
その原因を振り返ると、時間に追われて焦って運転していたことや、十分な睡眠をとらずに車を運転していたことがありました。
以前は、こうしたミスを単なる「不注意」や「忙しさのせい」と捉えていましたが、ADHDの特性を知ったことで見方が大きく変わりました。
ADHDには、他動性や衝動性といった特性があり、急いでいるときほどミスが起きやすくなるという傾向があります。
焦って行動すればするほど、注意が散漫になりやすく、結果として事故やトラブルにつながるリスクが高まるのです。
こうした知識を得てからは、特に運転時には「とにかく時間に余裕を持って行動する」ということを意識するようになりました。
急がない、焦らない、無理をしないという行動指針を自分の中で明確に持つことで、以前より安全に行動できるようになったと感じています。
また、学生時代から私は「いつも時間ギリギリで動く」ことが当たり前になっていました。
毎朝の支度や授業への出席など、常に時間に追われているような感覚で生活しており、それが自分の性格の一部だと思い込んでいました。
しかし、精神科を受診し、自分がADHDであることを知ったことで、これまで「性格」と捉えていたものが実は「特性」であると気づいたのです。
これは私にとって非常に大きな発見であり、今まで無意識に続けていた行動を少しずつ見直すきっかけにもなりました。
そして二つ目の変化は、「ちょっとした諦め」ができるようになったことです。
ここで言う「諦め」とは、ネガティブな意味ではなく、「受け入れ」と言い換えた方が正確かもしれません。
私は以前、普通の人が当たり前にできていることが自分にはできないと感じるたびに、強い劣等感や焦りを抱いていました。
周囲に合わせて頑張ろう、もっとしっかりしようと自分を奮い立たせてきましたが、なかなかうまくいかず、自己否定の感情ばかりが募っていきました。
しかし、自分の脳の特性を理解し、「これは私の努力不足ではなく、特性の一つなのだ」と認識できたことで、完璧を目指すことに対する執着が少し和らぎました。
無理に自分を変えようとするのではなく、「自分はこういう傾向があるから、どうすれば失敗を減らせるか」「どういう工夫をすれば生活しやすくなるか」といった、前向きな思考ができるようになったのです。
以前の私は、「気をつける」「努力する」といった精神論に頼るばかりでしたが、それだけでは限界があるということを実感しました。
今では、自分の特性を踏まえて、現実的で実行可能な方法を模索するようになっています。
このように、自分を責めるばかりではなく、より建設的に対処法を考えることができるようになったことも、診断を受けたからこその大きな変化だと感じています。
ADHDと診断されたけど変わらなかったこととは?
ADHDと診断されたことで自分の行動や考え方に変化が生まれた一方で、変わらなかったこともあります。
その一つが「人間関係」に関することでした。
診断を受けた後、私は数名の親しい友人にだけ自分がADHDであることを打ち明けました。
けれど、打ち明けることには大きな不安がありました。
発達障害という言葉の持つイメージや偏見に、自分自身も少なからずとらわれていて、「障害者を見るような目で見られるのではないか」「これまで通りに接してもらえなくなるのではないか」という恐怖があったのです。
しかし、実際に話してみると、思っていたような反応は返ってきませんでした。
友人たちはこれまでと変わらず接してくれましたし、むしろ「特性のひとつ」として自然に受け止めてくれる人もいました。
その中には、私の特性を理解した上で、一緒に仕事を進めてくれる人もいて、その存在に私は心から救われました。
特別扱いをするわけでもなく、だからといって否定することもなく、ありのままの私を受け入れてくれる関係が続いていることは、本当にありがたいことだと感じています。
精神科への通院を決意するまでには長い時間がかかり、正直なところ、当初は自分が障害を持っているという現実を受け入れることに大きな抵抗がありました。
それでも、診断を受け、自分の特性を理解できたことは、自分の人生にとって大きな意味を持ちました。人との関わり方が劇的に変わったわけではありませんが、「自分を知る」という第一歩を踏み出せたことで、周囲との関係の中でも無理をしすぎず、自分らしくいられるようになったと思います。
振り返ってみれば、精神科に通うことを拒んでいた過去の自分に、「行ってよかったよ」と伝えてあげたい気持ちです。
今では、自分の特性を理解したうえで、少しずつでも前に進めている自分を肯定できるようになりました。
もしあなたも同じような内容で悩んでいたり、足踏みしているのであれば、
ぜひ一度診察に行ってみることをおすすめします。
自分の一面を垣間見るいい機会になれるかもしれませんよ。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。